物事をすすめるときに、「PDCAを回せ」とよく言われます。計画を立てて実行し、結果を評価して改善することを続けることで、よりよい状況になると考えられているからです。
しかし、より良い状況とは何でしょうか? 何をもってより良いと判断できるのでしょうか?
このような疑問を解決しないままに、PDCAを言われるまま回していても効果的に果実を手に入れることはできません。まず、PDCAを回すことによって得られる効果・効能を理解しておく必要があります。
ここでは、PDCAを回すことでどのような効果・効能があるのか、何を期待できるのかを解説します。
PDCAで期待できるのは明確な改善
PDCAで実現できるのは「改善」です。今ある現状に不足・不満があって改善活動を行うとき、使いやすい手法です。
不足・不満を言い換えると、「理想とのギャップ」「現実との乖離」などとも表現できます。
今ある現実が、あなたの求める理想と違うから不満を感じるのです。不満を感じるから、現状を改善して理想に近づけたいのです。
PDCAは、Pで理想と現実のギャップを分析し、改善案を考えます。このときの現状分析がPDCAの肝ともいえます。
ここでギャップを明確にするから、その後の改善活動がスムーズに進みます。
これこそがPDCAの一番の効果といえます。
改善の例を考えてみる
例えば、あなたが今の生活に満足していて、一切の不満を感じているとしたら、PDCAを回したとしても得るものはありません。むしろ、PDCAを回すことができません。Pが実行不可能だからです。
しかし、あなたが「部屋が狭い」という不満を感じていたらどうでしょう? これは、「部屋が狭いと感じている状態を変える」改善策を考えることができます。これならPDCAを回すことが可能です。
まず、P段階として「部屋が狭い」と感じている原因を探ります。単に物が多いから狭いのでしょうか? 家族が増えたからでしょうか? 友だちの部屋と比べて狭いと感じたのかもしれません。
原因が絞り込めたら、具体的な行動を伴う解決策を考えます。先の3つの例なら以下のような解決策が考えられます。
- 物が多い→物を捨てる。トランクルームを借りてものを預ける。広い部屋に引っ越す。増築する。
- 家族が増えた→広い部屋に引っ越す。増築する。家族と別居する。家族を捨てる。
- 友達の広い部屋と比べた→広い部屋に引っ越す。我慢する。 などなど
実際に実行できるかどうかはさておき、考えるのは自由です。幅広く自由に考えられると、大きく改善できる可能性が高まります。
実行に移せるかどうかは、リソースや他の条件があるので、それらを踏まえて立案します。
そしてD段階で実行します。実行してみて、C段階の評価をします。「部屋が狭く」感じられなくなったら大成功です。
反対に、まだ「部屋が狭く」感じているのなら失敗です。次のA段階に進みます。
A段階は改善です。実行してみてわかったことを踏まえて、さらなる改善案を立案します。
例えば、増築してみたものの失敗だったとしたら、何が原因なのでしょうか? 増築面積が狭かったのでしょうか? 想定以上に物が多かったのでしょうか?
その分析結果により、また改善案をつくります。→物を捨てる。更に増築する。などです。
こうして改善を明確に実現できるのがPDCAの効果・効能です。
記録することで効果が上がる
ここまでの内容を読んで、普段からやっていることと変わらないと、あなたが思ったのならそのとおりです。普段から何気なく行っていることを、PDCAと名前をつけて読んでいるだけです。
したがって、PDCAと聞いて大げさに構える必要は全くありません。普段から行っている小さな改善のつもりで実行するとよいです。
ただし、PDCAの各段階は記録しておくことで効果を増します。あなたが何に不満・不足を覚え、同改善しようと思ったのか。そして、その結果成功/失敗し、原因をどのように分析したのか。
これが記録してあるのとないのでは、2回め3回目のPDCAサイクルがうまくいくかどうかに大きく差が出ます。
あなただけでなく、多くの人が頭の中だけで考えたことは数日のうちに忘れてしまいます。試しに、1週間前の一日の行動や思考について思い出してみると良いです。あまりに内容が薄いことに驚くはずです。
これが記録してあると、詳細に思い出すことが可能になります。つまり、C段階の評価やA段階の改善案の立案時に大いに役立ちます。
詳細を把握しないままに、評価・改善案の立案をしても、当初と同じ立案をしたり、分析が足りなかったりします。要するに、良い改善案を作ることができません。結果、改善がうまくいきません。
このように、記録を付けることでよりよい改善を行うことができます。